携帯版 歌詞GET

みんなの歌詞GET   ようこそ ゲスト さん   メンバー登録(無料)   ログイン  

投稿した小説(ノベル)にコメントがもらえるコミュニティ

小説(ノベル)

[広告]

雀の涙 (完結作品)

作: 花のありす

僕は雀を一匹殺したことがあるんです。

ある男は語りだした。これはその男の手記である。

 ある晴れた秋の日のことです。一組のつがいの雀が仲睦まじく暮らしていました。秋の陽だまりの中を心地よさそうにトントンとリズミカルに歩いては身を寄せ合いチュンチュンとおしゃべりをしています。枝から枝へ、土塀から土塀へそれはそれは楽しそうに飛び回っています。探してきた餌を分け合い、愛を語り合って過ごしているかのようです。
 そんな雀の姿を男の子は羨望の眼差しで眺めてはいつか手に取ってみたいと思いました。男の子は様々な仕掛けを仕掛けては彼らが入ってくるのを待ち焦がれました。しかし一向につかまる兆しが見えません。
 男の子はその雀を手に取ってみたかったのです。そして買って貰ったばかりのおもちゃの銃で撃ってみようと思いました。土塀の上を歩くその一羽の雀に向けてパスンとプラスチックの弾を撃ちかけました。命中しました。
 ピーピーピーとその雀は排水溝の中へ逃げていきます。一匹と一人はその後を追います。やがてその雀はぐったりとしたまま息を絶えました。男の子は命の尊さというものを知りませんでした。とても悲しい気持ちになって家に帰って行きました。
 残された一匹の雀は何が起こったのかよく分かりませんでした。じっと息絶えた雀の側で眺めるばかりです。ツンツンとくちばしで体を揺すってみてもさすってみてもピクリとも動きませんでした。雀の死臭を嗅ぎつけた虫たちが彼を食べようとやってきます。
 残された雀は必死になってその虫たちをけちらしました。言うことを聞かない虫を食べもしました。それでも雀はピクリとも動いてくれません。ウジが湧けばウジを食べ雨が降れば毛づくろいをしてあげ雀に語りかけます。
 どうしていなくなってしまうの、なぜ何もしゃべってくれないの雀はたくさんの涙を流しました。喉が渇いてもお腹が空いても片時もその側を離れようとしませんでした。やがて季節は冬に変わり冷たい風が吹きすさび最後に残された形も消えてなくなりそうになりました。
 雀は一生懸命に元の形に戻そうと重い体を引きずります。そうしてたくさんの涙を流しました。雀にはもう動く力が残されていませんでした。飛ぶ力もありません。だけれども飛ぶ必要もありませんでした。
 どれくらいの時間が経ったでしょうか、雪が降り始めています。雀は折り重なるようにして深い眠りについたのでした。最後にひとすじの涙が流れました。その雀の涙は誰にも気づかれることはありませんでした。そして雪に埋もれて冷たくなったその雀を食べようとする者も誰もいませんでした。雪はやさしくその雀に降りそそぎます。街はクリスマスのイルミネーションに彩られ幸せな音楽に満たされています。
                                          完

※この小説(ノベル)"雀の涙"の著作権は花のありすさんに属します。

この小説(ノベル)の評価
評価項目評価数
合計 0
[広告]

この小説(ノベル)のURLとリンクタグ

この小説(ノベル)のURL:
この小説(ノベル)のリンクタグ:

コメントを書く

登録済みのユーザーは ログイン してください。
登録済みでない方は 新規登録 してください。

新規メンバー登録(無料)
第4回みんなのライトノベルコンテスト「しまのわライトノベルコンテスト」
  • 公式サークル みんなの歌詞
  • 公式サークル みんなの詩(ポエム)
  • 公式サークル みんなの小説(ノベル)
  • 公式サークル みんなのイラスト
  • 公式サークル みんなの写真(フォト)

ランキング

※ここでは2018年5月17日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。※同順位者が多すぎる場合はすべてを表示しきれない場合があります。

サポートサイト

J@P