小説(ノベル)
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散り桜と涼寛さん (完結作品)
作: パープルウインド
- カテゴリ:ショートショート
- 投稿日:'11年4月27日 01:26
- ページ数:0ページ
- 表示回数:1320回
- 総合評価:1
- この小説(ノベル)へのコメント:2件
暖かい春の日。満開だった桜も咲き飽きて、散り散り葉桜となった。桜の名所も人が疎らとなり、今年最後の桜を見上げる人々の表情も名残惜しげだ。
「この時期の桜が一番美しい。」
涼寛さんいかにも楽しげに嘯いた。
喫茶”春夏冬至”のマスターである涼寛さんは、私の隣で雪駄を引き摺り鳴らしながら眩しそうに上目使い。彼はいつもカウンターで着ている藍色の作務衣、肩までかかる髪を束ね日本手ぬぐいをかぶっている。ちょっと如何にも陶芸家風情だが、彼はただ楽だという理由で常時この風貌である。
「散り花ですよ。」私が問う。
彼は上目を外しもせず、微笑む様に切羽した。
「桜の命もこれからじゃ。種付け終わって、はらまして、是より子供の為の栄養作りじゃ。」
涼寛さんの視線が下りてきた。この御人は未だ微笑んでいる。人影まばらな桜の名所を行き来する人々の動きが止まり、痛いほどの視線が、私達に注がれた。
涼寛さんはいつも声が大きい。また屈託がない。私のとっては弱りものだ。
暖かい日差しの中。冷や汗をかきながら、私は涼寛さんの腕を掴み、春夏冬至への道を急いだ。
※この小説(ノベル)"散り桜と涼寛さん"の著作権はパープルウインドさんに属します。
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この小説(ノベル)へのコメント (2件)

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こんにちは。
お話自体にとくに目新しい点というのはないのですが
短いながら、その設定や描写には目を引くものがありました。
とくに言葉選びについては、主に詩を書かれているからでしょうか、
その"くせ"のせいで一部つかみづらい部分があったものの、
それを許容する空気が作品全体から醸し出されており、
それこそがこの作品の特長であるように感じました。
パープルウインド
やまもさん
コメントありがとうございます。
評価を書いて頂き大変ありがたいです。
もっと精進いたしますので、これからも辛口でいいのでコメント下さいね。