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小説(ノベル)

現代社会と魔法の雑貨屋さん (執筆中)

作:きつねちゃん / カテゴリ:ショートショート / 投稿日:'18年9月28日 15:47
ページ数:1ページ / 表示回数:回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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第1話『乾燥剤ゾンビの話』

 うちの裏庭に突如として現れ、住み着いたそれは、どうにも現代社会に存在するそれとは明らかにかけ離れた異質なものだった。

 裏庭の新しい主人の名前はシシー・ミントというらしい。現代社会に生まれていたら、きっと世の科学者と肩を並べるような熱心な研究者で、運動神経はお世辞にも良いとは言えず、またどこか世間知らずなところも披露することもあった。一方の僕は、昨日も『平日のくせにボードゲーム会!』という、とても出席なんてできそうにもないイベントで遊ぶ自分の姿を妄想しながらイマドキ山積みの書類とにらめっこをしていたのだった。

「今日も新製品、持ってきたよ!」
そう元気よく裏庭が見える窓から飛び出してきたのはシシーだ。平々凡々な僕、一和也(読めない人が多いのだが、苗字はこれでニノマエと言う)は、今日もちょっとした騒ぎの予感に今からうなだれるのだった。

「ウチには湿気に弱い製品も多いからね、ちょっと奮発して良い物買ってきちゃった!」
このシシーという少女、どうやら現代社会に来てからもちょくちょく故郷の世界に帰っては品物を仕入れて怪しげな商売をしているらしい。彼女は何やらキューブ状の、気味の悪い灰色がかったそれを掲げて
「これ、なんだと思う?」
とウキウキしながら聞いてきた。どうせロクなものじゃないんだろうなと思い分からないと返すと、彼女は自慢げにこう言い放った。
「これはねー、いわゆるゾンビ。ゾンビから作った乾燥剤です!」
はぁ、ゾンビですかはいはい……ゾンビ? どういうことだ。ゾンビといえば、普通は腐った死体を思い浮かべるじゃないか。彼女が素手で鷲掴みにしている(それがゾンビだと思うと今すぐやめさせたい、気持ち悪い!)は、平凡な僕が思い浮かべるようなゾンビのそれとは全く違うものだった。
「さっき言ったでしょ、ウチには湿気に弱い製品も多いって。だからこの吸湿力抜群の乾燥剤ゾンビを使ってみようと思ったの! これでにっくきジメジメした湿気に儀式用カエルをダメにされることもなくなるわ!」
「それは良いんだが、ゾンビって言ってもこれはただのキューブじゃないか。どうなってるんだい?」
ああしまった、少女を余計活気づけることを言ってしまったぞ、と思った時には遅かった。
「これだからニノさんは遅れてるんです、これは室内に置くだけでグングン湿気を取ってくれる優れものなんですよ? オマケに効果がなくなったら勝手に消えてなくなるから、その時が替え時だってすぐにわかっちゃうんです!」
「へぇ、効果が切れると消えて無くなるねぇ……」
都合のいいものがあるものか、だいたい魔法だからってそんな何でも便利に片付くものなのか、と僕は彼女の言っていた“勝手に無くなる”の部分に何故か違和感を覚えていた。その違和感の正体は、数日後に町内の回覧板でうっすらと悟るのであった。

「夜を徘徊する不審者にご注意を……だって、この辺そんなに治安は悪くないとはおもうんだけどなあ」
「夜は月の出具合によっては儀式とか調合も捗るのに嫌ですねー。」
いや、確かに治安は悪くないとは言えお前は年齢的にも夜中は寝ていろよ。年齢聞いたこともないけど。とにかく、どうも夜中に出る不審者の話でご近所は騒ついていた。何しろ目撃情報がやれ「血にまみれた中年男性が」「目玉がない」「嫌な臭いが辺りに漂っていた」「地面から急にわきでてきた」そんなよくわからない情報であふれていたからだ。僕も帰りが遅れたらそのうち出会すかもな。なんて呑気に思っていた。
「嫌ですねー、徘徊は別にどうでもいいんですけど臭いがするって。」
シシーはシシーで別方向に呑気なことを言っている。
「お前、その不審者に襲われたらどうするつもりなんだ。」
「その時は護身用にそういう悪漢を撃退するグッズをいくつも身につけてますから!例えばこれは……」
しまった、彼女の雑貨自慢を展開させる絶好のチャンスを与えてしまった。こうなると軽く3時間は拘束される。案の定、僕はこの日はずっと彼女のアトリエで雑貨についての自慢やうんちくを聞かされる日になってしまった。貴重な休日が……

 その日、ついに出会ってしまった。……その不審者に。そして同時に、いつぞやの違和感と、不審者の正体がほぼ分かってしまった。ゾンビだ。
「〜〜〜っ!」
声にならない悲鳴を上げ、砕けそうな足腰を引きずりながら情けない姿でヒィヒィその場から逃げ出した僕は、どうにか帰宅して小一時間ほどトイレで気を失った後、シシーのアトリエに怒鳴り込みに行った。
「おい! お前の持ってきたあの乾燥剤どうなってるんだ!」
シシーは夜中に調合を始めようとしていたところで、目を白くしながら僕が首根っこを掴んで問い質すのに対して、頭をがっくんがっくんさせるままだった。
「乾燥剤って……ああ、アレなら効き目バツグンだったけど効き目もすぐ切れちゃうみたいで、バンバン使っているけど……それがどうしたの?」
「例の不審者だよ! あの乾燥剤、元はゾンビだって言ってたよな? 乾燥剤がゾンビに戻って夜な夜な徘徊してるんだよ!」
はぁ、と彼女はなんだかまだ理解が追いつかないようだった。その次の瞬間、隣室からゴトンと大きな物音がした。
「なんだよ今の音……」
「ニノちょっと見に行ってよ……」
は? なんで僕が、と一瞬思ったものの、僕の予想が正しかったら、彼女にそんなことをさせるのは酷だとも思い(なんてお人好しなんだ)恐る恐る隣室のドアを開けた。
「そこ、倉庫なんだけど」
彼女のその一言で確信した。これもゾンビだ。ちょうど乾燥剤としての効果が切れて、何らかの理由で本来の姿に戻ったんだろう。扉の先にはちょうど小一時間程に僕が見たアイツと同じような姿があった。
「〜〜〜っ!」
本日二度目の声にならない悲鳴を上げながらも、先手必勝、そこにあったホウキでゾンビをめった打ちにした。が、相手は既に死んでいる。なぜか動いてるけど。ホウキの殴打に物ともせず、こっちに向かってきた。瞬間、後ろから。
「伏せて!」
の声より先に景気のいい火の玉のようなものが頬を掠めた。それはゾンビの顔面に命中して、ゾンビは呻き声と共に灰になった。……なんなんだ。
「これで分かっただろう! お前の買ってきたゾンビの乾燥剤の効果が切れて、無くなるって言っていたのは元の姿に戻ってこんな風に徘徊し始めたからだ! 今、町内をうろついている奴らもこの乾燥剤が元に戻ったやつだぞ!」
シシーは面食らったような顔だ。
「早くあのゾンビたちをどうにか退治しないと……」
「それなら乾燥剤を作ってるゾンビおじさんに話を聞いてみましょう。」
ゾンビおじさん? 乾燥剤を作ってる。なるほど、しかしこんな物騒なものを作ってる人だ、こうなるのを知らないわけがない。
「……そのゾンビおじさんっていうのは、どういう人なんだ?」
「えっと、村の人たちからは家畜や作物をゾンビから守ってくれている偉い人だって有名で」
ああもう、今ものすごいマッチポンプを聞いた気がする。きっとそのおじさん、こうして売りつけたゾンビに村や街を襲わせておいて、後から自分が退治する。その退治したゾンビをまた乾燥剤にして売りつけてるんだ。それがこっちの世界にまで、なんてこった。
「そのおじさんのことはアテにできない。僕たちで何とかするぞ。」
「え? でもそのおじさんゾンビ退治はおてのもので」
いいから! と僕はシシーの腕を引っ張り、夜の町内に飛び出した。

「ゾンビの乾燥剤、今までいくつ使った?」
「えっと、三日に一個ペースで使ってたから、七個くらい?」
ということは、さっきやっつけたのを含めてあと六体のゾンビが町を闊歩していることになる。ゾンビが町の人を襲ったり、事が大きくならないうちに、僕たちの手であいつらをどうにかしなきゃ。
「でもどうやって探すの?」
……忘れてた。どうしよう。がむしゃらに探し回ったってそう上手く見つかるわけがない。そうだ。
「お前の雑貨に、臭いに反応するようなものとかないか?」
「反応っていうか……名前もズバリ、ブタの鼻って言う鼻の効くようになるアイテムならあるけど。」
それだ、ドンピシャだ。僕らはすぐさまUターンして、そのブタの鼻を付けた。
「なんかへんな顔」
僕だって好きでこんな格好しているわけじゃない。ブタの鼻を付ける役目は僕だ。シシーにもやらせてやりたいくらいだが、彼女の火炎魔法がゾンビの放つ臭いで集中が途切れて、周りまで巻き込んで燃やされては困る。そんなわけで
「くさっ!」
腐った肉の据えた臭いが僕を襲った。今、町内にいる犬たちはこの臭いとずっと戦っていたりするのだろうか。なんだか申し訳ない気分だ。そうこうしているうちにゾンビを探り当てた。
「あいつが気付いてないうちに、撃って!」
シシーが火炎魔法を放つ。杖の先から、先ほど僕の頬を掠めたそれち同じ閃光が放たれ、ゾンビに命中すると、ゾンビは灰になった。南無。
「それがもしさっき当たってたらと思うと、ゾッとしないな……」
「お、終わったことは忘れましょう!」
こっちは命が危なかったと言うのに、なんてやつだ。何だかんだあって、ゾンビ退治の町内巡りは順調に進み、最後の一体がいると思われる公園にやってきた。
「おかしいな、臭いでは確かにこの辺にいるはずなのに……」
僕がシシーから少し離れた時、突如として地面から腕が伸びてきた。しまった。
「シシー!」
ゾンビの腕が彼女の足を掴み、引きずり込もうとしている。彼女はそうされまいと必死にもがくも、すぐに足首を地面に引き込まれてしまった。危ない。
「この野郎、こうしてやる!」
ゾンビの全容が見えていなかったのが良かったのか、僕は全力でそいつの腕を蹴っ飛ばした。鈍い音と共に、その腕は公園の茂み目がけて飛んでいってしまった。シシーは自由になった。
「早くそこから離れろ!」
と言いながら、なぜかシシーがそうするより先に彼女の体を抱いて逃げ出した。すると、さっきのところからいい具合に最後のゾンビが這いずり出てきた。……ああ、ちょっと前に僕のことを襲いかけたあいつじゃないか。
「やってくれ!」
その声で、足を掴まれた混乱から戻った彼女の火炎魔法で無事、最後のゾンビも灰になった。南無。

「こんな騒動、二度と起こしてくれるなよ……」
その願いも、割とすぐに打ち砕かれそうだと思いながらも、今はそう願うしかなかった。ブタの鼻によるゾンビやその他諸々の悪臭からも解放されて、ようやく家に帰って……
「なんで僕のベッドにお前がいるんだ。」
「だってこっちの方がフカフカで私のせんべいぶとんより気持ちがいいんですもの〜♪」
明日は平日なのに、勘弁してくれ……結局、僕は今のソファーで寝ることにした。悲しい。

それから次の休日になって、シシーは僕の家に朝食をゴネにきた。
「こっちのご飯も美味しいし、それに一人で食べるより賑やかで楽しいからね!」
……いいんだけどさ。と、居間のテレビをつけてニュースを流していた。すると、耳を疑うような話が飛び込んできた。
「猪鹿町(これが僕らの住んでいる町の名前だ)の第一森の公園で、男性の右腕と見られる、腐敗の進んだ遺体の一部が見つかりました。警察では殺人事件の可能性として捜査を進めています。なお、猪鹿町では数週間前から夜中に不審者の目撃情報が相次いでおり……」
ああ、そうか。そういえばシシーを掴んだ腕は僕が蹴っ飛ばしたから、燃えはしなかったのか。
「ねぇ、これって」
「何も知らないぞ、僕は。」
本当に、勘弁して欲しい。

※この小説(ノベル)"現代社会と魔法の雑貨屋さん"の著作権はきつねちゃんさんに属します。

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