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小説(ノベル)

まにまに (執筆中)

作:春星 / カテゴリ:ショートショート / 投稿日:'09年10月11日 00:38
ページ数:3ページ / 表示回数:4882回 / 総合評価:1 / コメント:2件

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第一章 月

 ねえ月が消えたよ、と誰かが言った。

 太陽が燦々と照らし、強い風が吹いていた。砂漠と化したこの世界に夜はない。
 「婆や、人がいるよ」坊やが言った。
 すると婆やは、「皆、この風から身を守っておるのです」と、指を指した。
 人々は岩陰に隠れていた。大人は子を抱え、盾になり、飛ばされぬよう足を踏ん張っていた。
 「風がやめばいいのにね」
 すると、吹きやまぬはずの風は、ゆるゆると吹くのをやめおさまった。舞っていた砂も、静かに地に着いた。
 人々は喜び、涙を流した。
 「風がやんだ!」
 「神様がとめてくださった!」
 「神様だ! 神様は私たちを見ていて下さった!」
 坊やは人々に近づいた。
 人々は、坊やに驚いた。坊やは当たり前のように立っていた。隣には婆やも立っていた。
 「お前ら、どこから来たんだ? どうやって風をしのいでいたんだ?」
 男が訊いてきた。人々が砂にまみれ汚れているのに、二人は綺麗だったからである。
 坊やは言った。「ずっとココにいたよ。ずっと、立っていたよ」
 人々はしばらく二人を見つめていた。
 「神さんじゃ! このお方こそが神さんじゃ!」
 誰かが言った。坊やは、それを聞いて、怪訝な顔をした。
 「どうしてボクが神様なの?」
 坊やの質問に、誰も答えなかった。
 「神様だ!」
 「神様、ありがとうございます」
 「神様、もう私たちを見捨てないで下さい」
 「神様だ! 神様が現れた!」
 「神様は万能だ! だから風がやんだんだ!」
 「神様、感謝します」
 「私たちに出来ることがあれば、なんでも言って下さい」
 「神様」
 「神様」
 「神様」
 「神様!」
 人々は坊やを拝み始めた。坊やはそれが嫌だった。
 「神なんていないよ」
 もう一度言った。
 「神なんて、どこにもいないよ」
 人々は黙り込んだ。
 「ボクは君たちの神様ごっこに付き合う気はないんだ。君たちの“神様”にだってならないんだ。だって、ボクは神じゃないんだから」
 誰かが泣き出した。子どもだ。子どもが泣いた。そして、その母親も泣き出した。
 「どうして、そんな嘘をおっしゃるのです?」
 「風がやんだのはあなたのおかげです!」
 「どうか、私たちを見捨てないと言って下さい」
 「私たちは神なしでは生きていけません」
 「どうか、どうかお助け下さい」
 坊やは人々を哀れだと思った。
 「君たちは、そうやって、一生誰かに助けてもらうの?」
 誰も答えなかった。
 「一生“神様”に縋って生きていくの?」
 誰も答えなかった。
 「全部、神様の所為にするの?」
 誰も答えない。
 「自分が救われたいから、いもしない“神様”を創ったの?」
 誰も答えない。
 「本当は知っているんじゃないの?」
 誰も知らない。
 「神様、怒っておられるのですか? どうかお許し下さい。」
 一人が言うと、他も同じようにひれ伏し、謝罪を述べ始めた。
 「私たちは罪を認め償います。ですから、どうか……」
 坊やは嫌気がさしてきた。
 「この世に、神様なんていないんだよ」
 聞いて老人が立ち上がった。
 「この者は神ではない! 神を冒涜している!」
 次々と、人が立ち上がり、坊やに言った。
 「そうだ! こいつは神じゃない!」
 「出て行け! 神を信じないものは救われない!」
 「邪推なやつだ!」
 「寄るな! 私たちまで汚れる」
 「出て行け!」
 「出て行け!」
 「二度と現れるな!」
 とうとう、石を投げつけるものが現れた。婆やは、坊やに耳打ちした。
 「もう良いでしょう。そろそろ帰ろうではありませんか」
 坊やは何も言わなかった。そして、飛んでくる石を手で掴み、
 「君たちは、もう寝た方がいい」
 言うと、一人の男が怒った。
 「なんだと!」
 「なんてこと言うの!」
 「悪魔じゃ! こやつらは悪魔じゃ!」
 「なんて恐ろしいの!」
 坊やは怪訝な顔をした。
 「私たちを殺しにきたのよ!」
 「神様が黙っちゃいないぞ!」
 そして、納得した。
 「君たちは“夜”を知らないんだね」
 人々は眉を寄せた。
 「君たちは、夜にならないから、眠ったことがないんだね」
 一人が訊いた。
 「お前は眠ったことがあるのか?」
 坊やは微笑した。
 「ボクは毎晩眠っているよ。そして、朝になったら目覚めるんだ」
 人々は呆気にとられた。
 「……神様だ」
 誰かが言った。
 「神様が復活したのじゃ!」
 「神様だ!」
 「神様だ!」
 「やっぱり神様だ!」
 「神様は万能だ!」
 あまりの豹変振りに、なんて自己中心的な人達なんだ。と、坊やは驚いた。
 「誰だ、神ではないと言ったのは!?」
 「嘘をついたのは誰だ!?」
 「私たちを陥れようとしたのは誰だ!?」
 「悪魔だ! 悪魔が俺たちを騙そうとしたんだ!」
 やがて、一人の老人が囲まれた。
 「退治だ!」
 「今直ぐ退治だ!」
 坊やは悲しくなった。
 「自分の都合ばかり押し付けて、君達の“神様”は許してくれるの?」
 「神様は心がお広い!」
 「私たちはなにも間違ったことをしていない!」
 「悪魔を退治するのだ!」
 「悪魔を生かしてはおけない!」
 坊やは言った。
 「都合のいい“神様”だね」
 婆やが、坊やの耳元で囁いた。
 「そろそろお昼寝の時間です」
 人々は老人を囲み、石を投げていた。老人は血を流し、泣いている。坊やは哀れだと思った。けれど、坊やには老人を助ける術がなかった。だって、坊やは“神様”ではなかったから。
 「帰ろう」
 言うと、坊やは婆やの手をひいて歩き出した。
 すると、さっきまでやんでいた風が、再び強く吹き出してきた。人々は慌て、焦り、坊やを探したが、既に坊やの姿は消えていた。

※この小説(ノベル)"まにまに"の著作権は春星さんに属します。

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切ない 1
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この小説(ノベル)へのコメント (2件)

トッポジージョ

'11年12月6日 19:36

この小説(ノベル)を評価しました:切ない

突然に失礼します。
しばらく前に、コメントを戴いた者です。

坊やがフッと居なくなる感じが、好きです。

春星

'11年12月7日 19:07

>トッポジージョさん
こ、こんな放置状態の小説を読んでくださっているなんて…嬉しい反面お恥ずかしい(;´Д`)

これ、一応最後まで書けば坊やが何者かわかるはずだったんですが、
全然進んでないっていう。ごめんなさい。
そうなんです。フッと居なくなる不思議な存在なんですねー

コメントありがとうございました

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