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小説(ノベル)

Decide future. (完結作品)

作:S.ディオネ / カテゴリ:ファンタジー / 投稿日:'09年9月12日 00:28
ページ数:3ページ / 表示回数:1回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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Rewrite

図書室を出て、廊下を歩き、階段を上る。白い壁に鉄の手すり、曇ったガラス窓。そんな地味な景色の先にはこの街一番の風景が僕らを待っていた。
きれいな青空、その中に浮かんでいる複数の千切れ雲、小さく見える建物。そこはこの学校の屋上だった。僕は学校にこんなにきれいな場所があることに気づかなかった。というのも、ここは立ち入り禁止区域だからだ。誰もここには入ってこようとしない。そう思うとなんとなくこの絶景が特別なものに見えるような気がした。ここは彼女のお気に入りの場所なのだろうか。

彼女は景色を眺めながら浮かない表情でおもむろに口を開いた。

「私はね。孤児なんです。両親がいないんです。親戚も何もいません。だから私はこの街の施設で育ちました。
そこで、一人の男の子と親しくなったんです。その子はお兄ちゃんのように接してくれました。私はいつからか“お兄ちゃん”と呼ぶようになっていたんです。」

重々しく言葉を発するその口元は、確かに強張っていた。

「ある日、お兄ちゃんと施設の近くの公園で遊んでいました。鬼ごっこだったんです。
ルールがあったんです。公園からは絶対に出ていけないというものだったんです。
でも私はルールを破ったんです。公園から飛び出し道路に出しました。」

「それが悲劇の始まりだったんです。お兄ちゃんは車に轢かれそうだった私をかばって交通事故にあってしまったんです。」

声が震えていた。滲んでぼやけはじめていた。悲しみの表情を必死に押し殺しているようだった。 僕は彼女のそんな姿を呆然と見ていることしかできないでいた。

「お兄ちゃんは、何とか一命を取り留めました。でも、お兄ちゃんは植物状態になってしまいました。そのお兄ちゃんは何年も目を覚ましませんでした。でも、最近になって・・・・・・、お兄ちゃんは目を覚ましましたのです・・・・・・・・・・・・。」

「私は・・・・・・。あの人になんて謝ればいいのか、わかりません。」

彼女は今にも泣きそうな表情をしていた。僕は持っていたハンカチを彼女に渡した。彼女は、ありがとうございますと、あふれはじめる雫を拭き取る。

僕は、どう言葉をかけていいかわからなかった。

「・・・・・・。やっぱり、そんな優しいところが、似ています。」

「え・・・・・・?」

彼女は涙を拭き取りながら、言葉を紡ぐ。

「私、あの事故以来から人間恐怖症になったんです。だからこんな話は誰にもしたことはありませんでした。でも、あなたはお兄ちゃんに似てるんです。私に対していつも優しい、私のせいで人生が狂ってしまったあの人に・・・・・・。だから、あなたには話しかけることができました。あなたならお兄ちゃんのように私の話を聞いてくれるって思っていました。」

僕は、幸せに生きてきたんだなと思った。彼女の境遇を考えると、こちらも胸がいっぱいになる。悲しみや苦しみにずっととらわれていたのだろう。
僕はいろいろ考えた。良い言葉が見つからない。僕はとりあえず、口をあける。

「お兄ちゃんはたぶん君を待っていると思うんだ。君が思っているほどお兄ちゃんは憎んでいないよ。」

自分自身、何が言いたいのかわからなかった。

「そんなこと、誰にもわかんないじゃないですか。」

「なんとなくだけどそう思うんだ。たぶん寂しがってるよ。」

「わかりませんよ・・・・・・。そんなこと。私には・・・・・・。」

「・・・・・・。そんなに悲しいこというなよ。お兄ちゃんを信じてあげたらどうだ?」

「・・・・・・・・・・・・。」

沈黙する彼女と僕。果てのない青空のにつつまれる二人。こんな幸せそうな青がたくさんの人を幸せにしてくれそうな気がした。彼女も僕も、きっとお兄ちゃんも・・・・・・。
僕は、彼女を幸せにしてあげたくなった。今まで悲しんできたもの、苦しんできたものから救ってやりたかった。

「過去のことをいつまでも引きずって生きていても仕方がないよ。いつまでもそんな悲しみや苦しみの中にいて、友達すら作れなかったんだろ? 勇気を出して乗り越えていこうよ。」

そういった瞬間、彼女は目つきが変わり、まるで別人のようになった。と、同時にそれは激しい言葉に変わった。
「何でそんな残酷なことが言えるんです!?私は引きずって生きていかなきゃ駄目なんです!!!それが・・・・・・、私の・・・・・・。私ができる、たった一つの罪滅ぼしなんです・・・・・・。」

「違う!!!過去を引きずるんじゃない!!背負うんだよ!!!!」

彼女は僕の声に驚いていたようだった。僕は彼女に言い返す。かわいそうな彼女のために自分が教えることができることを、教える。

「生きていれば必ず悲しみや苦しみと出会うんだ。でも、それは生きていくのには必要だから、出会うんだよ。 悲しみや苦しみをそのまま放っておいたらいつまでたってもそのままの姿でいるんだ。でも、それと戦い、乗り越えることで人は強くなるんだ。人ってのはそういう生き物なんだよ。」

「大体、そんな生き方をして、お兄ちゃんは喜ぶと思うか?」

彼女は、崩れ落ちた。泣き叫んでいた。苦しんでいた。でも、その顔はの笑顔だった。はっきりとした飾りもかっこつけも無い満面の笑顔だった。泣いていたせいで目や鼻が紅く見えたが、僕の目には、彼女はすごく綺麗に見えた。そしてゆっくりと立ち上がり彼女は空を見つめだした。偽りのないように清んだ大きな青空。彼女はまるで未来を見つめるような眼差しで空を見上げていた。

しばらくの間が空き、彼女は久しぶりに言葉を発した。


「私、わかってるつもりでした。素直に現実に向き合えない自分が嫌いで・・・・・・。それで、今まで過去を引きずってきたんです。でも、あなたが私の目を覚ませてくれた・・・・・・。あなたのおかげで世界が広く見えるような気がします・・・・・・・・・・・・。本当にありがとうございました。」

そういった彼女は僕の目を見つめた。きれいだった。きらめく瞳に僕を映し出す・・・・・・。
そうしたらだんだん気が遠くなって・・・・・・・・・・・・。

※この小説(ノベル)"Decide future."の著作権はS.ディオネさんに属します。

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