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小説(ノベル)

騎士物語 (完結作品)

作:畔凪篤志 / カテゴリ:ファンタジー / 投稿日:'09年7月24日 19:52
ページ数:4ページ / 表示回数:回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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騎士物語:1+2

「剣を捧げた。この意味が分からないあなた様ではないでしょう」
 赤い髪を一房に束ねた騎士がひざまずきながらそのベールの後ろの人物に言った。
「……ええ、分かっています。しかし、わたしはあなたが」
「それ以上は私に対する侮辱と受け取りますが?」
「いえ……なんでもありません。それではあなたは戦場であるここに残る、というのですね?」
「はい。これ以上部下たちを死なせたくはありません」
 騎士の言葉には自責の念が込められていた。それを押し殺して騎士は自らの主に許しを請うた。
「このわたくしを一人にしてあなたは残るのですね」
「……はい」
 ベールの後ろから一人の少女が現れた。その瞳にうっすらと浮かべられた涙を見て騎士は顔をしかめる。
「では、あなたを、近衛騎士オリビエ・エルファート・ディレイシス卿をわたしの警護の任よりときます。さらに近衛の称号を剥奪し、以後わたしの前に現れることを許しません」
「はっ」
 分かっていたことだ。騎士はそう自嘲気味に心の中でつぶやいた。
 彼女を守る為にも、彼女の側にいてはならないのだ。それだけ自分の名前が売れていることを騎士オリビエは知っていた。
 彼女に背を向け退出するために扉へと歩き出した。
「…………薄情な人」
 少女がつぶやいたその一言に騎士は苦笑いを浮かべた。
「あれほどわたしを守ると誓って下さったのに、自分がいてはわたしの身を危険にさらすと知っているからあえて戦場に出ようなんて……わたしは、わたしはあなたが側にいてくれさえすれば死んでいいと思っていたのに」
 少女の独白に呆然としながら、騎士は振り返らなかった。その唇からは強く噛んでいるのだろう、赤い血が滴り落ちていた。

 『クリムゾンルード』
 『深紅の十字架とそれを囲う黄金の槍』の紋章に掲げる騎士を知らぬものは新人の騎士であるか、さもなければ、騎士を知らぬものであろう。
それでも『ホークテイル王国の守護騎士』の戯曲を知らぬ者はほとんどいないだろう。
 彼の騎士を倒せさえすればホークテイル騎士団の力が大きく削られる。
よって、叛乱が起これば真っ先に彼女が守護する第二皇女の居城『アラバステイヤ』が襲われるのだ。
 いつもなら『クリムゾンルード』の旗が出るまでもなく片付くのだが、今回ばかりはそうもいかなかった。
 叛乱軍はこともあろうか禁呪の使い手を投入し、『アラバステイヤ』の城壁を破壊し、一気になだれ込んできたのだ。
 突入してきた叛乱軍には『蹲る獅子と剣に巻きつく蛇』の旗を掲げる稀代の騎士、オーディミアス・グレイ・バーミリアンまでもが参戦していたのだ。
容易ならざる敵に『アラバステイヤ』に駐留する騎士団は苦戦し、ついに第二皇女がいる城の中核部分まで防衛線を引かざるをえなかったのだ。
 第二皇女は隠し通路から脱出することになっていたのだが、その時間すら稼げるかどうかという状態にまでなっていた。
 皇女を逃すためオリビエはあえて殿にいることを選んだ。
確かに皇女とともにいたほうが彼女は安全かもしれない。いや、そうだろう。
 けれどもオリビエはそれを選ぶ気にはなれなかった。
 皇女の護衛には自分が信頼する騎士数名を自分の代わりにつけた。主の願いを振り切ってまで、そして主を失望させてでもオリビエは殿に残らなければならなかったのだ。

「オーディミアス……」
「オリビエか。大人しくそこをどいて王女さんを渡してくれはしないか?」
 その言葉にオリビエは睨みつけることで返事をした。
 オーディミアス・グレイ・バーミリアン。その名は『ホークテイルの守護騎士』でオリビエの『クリムゾンルード』とともに語られる。
 『ブルータルパイソン』という名で語られる異国の騎士が彼だ。
 通り名だけ語られる異国の騎士、名前は語られない『クリムゾンルード』と対等に戦うことができ、そして戦友であると語られた隻眼の騎士。それがオーディミアスである。
 戯曲は事実を元にして脚色して作られる。
 それゆえに『蹲る獅子と剣に巻きつく蛇』の旗を確認したオリビエは苦渋の決断を下さなければならなかった。
 戦友ではあったが、同じ陣営にいたわけではなかった。彼にも彼の思惑があり利害の一致したオリビエとともに戦ったにしか過ぎない。
 ゆえにオリビエは知っていた。いつかこんな事が起きるのだろうと。
「……語ることはない、剣を抜け」
 オリビエは深紅の刀身をもつ細身剣を抜き放ち、オーディミアスに突きつけた。
「ふん、女のお前に負ける気はしないがな」
 そういいながらオーディミアスも漆黒の大剣を抜き放つ。
「腕力がすべてではない」
「ふん、腕力がすべてだよ」
 かくして二人の騎士はぶつかった。死力を尽し、自分の目的を果たさんがために。

「はぁ、はぁ、はぁ」
「……どうだ。俺に傷すらつけられないではないか」
 息を切らすオリビエとは対照的にオーディミアスは悠然としていた。傷はお互い負ってはいない。ただ、オリビエはオーディミアスの剣を捌くことでじりじりと体力を消耗させていた。
 一進一退、いや、オーディミアスの方がやや優勢――オリビエが多くの手数を稼ぐことで互角にしているといえるだろう。
 盾はとうの昔に捨てた。深紅の剣のみでは勝機を見出せない、そんな状況下でもオリビエは笑みを絶やさなかった。
「傷はつけれないな。だが、時間は稼げる」
「本気か? 皇女はどうせ隠し通路で逃げたんだろ? 俺の部下がそっちの出口をふさいでいるさ」
 オーディミアスの言葉にオリビエはますます笑みを深くした。
「貴様、皇女が武芸に通じていないと誰が言った? それを貴様に教えた奴は節穴だな。わたしの教え子でありわたしの技術を吸収した王女、アリス・ホークテイルは立派な武人だよ」
「何?」
「見た目の麗しさ、儚さで勝手に決め付けられたら困るな。彼女こそ我が永遠の主であり、弟子であり、わたしの後を継ぐことの出来る人だ」
 オリビエは呼吸を整えつつ、詠うようにいう。そして盾に忍ばせてあったもう一つの剣を回収する。
「貴様!」
「やっと気づいたか? 我が姫君はお前以外の敵ならば簡単にいなすことが出来るだろう。そう、わたしがここに残ったのはひとえに」
 オリビエは深紅の剣を左手に、盾から回収した黄金の剣を右手に握る。
「オーディミアス、お前を我が主のもとへ行かせないためだけだ。そして、我が命にかえても」
 十字に剣を構え、オリビエは言い放った。
「お前を、叛乱軍最大の危険分子を排除させてもらう」
「二刀……ちっ、そっちが貴様本来の姿か!」
「悪いな、この前は最後まで隠させてもらったよ、オーディミアス」
「はっ、ほざけ。二刀になったところで今までとはかわらん」
「黄金剣、オートクレイルには気をつけなよ?」
「なっ!」
 地を這うようにオリビエは疾駆した。
 それを迎え撃つようにオーディミアスは漆黒の大剣を横薙ぎに振るう。
 跳躍してかわしたオリビエを追撃するように大剣は強引に弧を描くようにして切り上げられる。
 左手の深紅の剣で受け流し、右の黄金剣を突き出すオリビエ。
 大剣の重さを利用しながらその突きを避け、大剣を引き戻したオーディミアスの額に汗が光る。
「一方で一撃を受け流し、もう一方で反撃する。確かに二刀は便利そうだな」
 そう呟きつつ距離を取り直すオーディミアス。
「大剣を自由にあつかうなんて。やはり、王女には荷が重い。ここで倒さなければ」
 オリビエは初撃をかわされたことで自分しか対等に戦えないことを再度自覚した。あの大剣の一回でもまともに食らえばその時点で死んでしまうだろう、冷静に自分の置かれている立場を認識する。
「名を売っていたのは皇女を隠す隠れ蓑にするためか」
「いや、不本意なことだ。わたしがいることで姫君の居城がいつも狙われる」
「……逆か。貴様の名が売れてしまったから、技術を伝えたな」
「ご名答だ。オーディミアス」
「美しいものには棘がある、か。まさしくその通りだ。……オリビエ、貴様の命を奪うのが惜しくなってきた」
「そうか、どうしたい?」
 オーディミアスはにやりと口の端を動かした。
「俺の妻にしたい」
「願い下げだ」
「残念だ」
 次はオーディミアスが仕掛けた。大剣を軽々と振るい、息をつかせぬ連撃を繰り出す。
「むっ」
 捌きながら後退するオリビエ。彼女はその大剣の重さに耐えながら、反撃の機会をうかがう。
 壁が迫る。オーディミアスは連撃を中止し、距離をとった。
「なんのつもりだ?」
「あいにく壁に剣をめり込ませる趣味はないんでね」
「…………」
「本来なら外で戦いたかったんだが、いかんせんこんな狭い部屋の中だ。慎重に慎重を重ねても何も問題はあるまい」
「そうだな。お前のその冷静さが憎らしいよ」
 オリビエの額に一筋の汗が流れた。

※この小説(ノベル)"騎士物語"の著作権は畔凪篤志さんに属します。

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