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小説(ノベル)

妖怪画譚 (執筆中)

作:櫟荷清太 / カテゴリ:ファンタジー / 投稿日:'09年7月18日 22:23
ページ数:4ページ / 表示回数:1011回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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画家と化け猫


 堺と呼ばれる狭間の世界には、家が一軒と画家が一人、化け猫が一匹そして枯れることなく永遠に咲き続ける血の様に赤く紅い曼珠沙華が咲き誇っていた。
 日本家屋の屋敷の土間の広い一室で、一日の大半を過ごす画家は、時折立ち寄る化け猫のマチコに笑いかける。
 三本の尻尾でまばらにぱしぱしと床を叩くマチコは金の目を細めて、横たわったまま、口を開く。
「どうだい、完成しそうかえ?」
「あと少しって所かな。納期は明日ですから……」
「まったく、帰僧(きそう)の奴は急くでならん。こちらの都合も考えて欲しいものえ」
「そんなこと帰僧様の前では絶対に言わないでくださいよ?」
 画家が溜息まじりに筆を動かす。
 左手に持った太さの違う三本の筆を切り替え器用に操り、右手にもったパレットから色を取りさり、画布へと付けていく。
 画布には深緑の高い山岳と鈍色の満月、そして山を登る黒い大量の影が描かれている最中だった。
 黒い影といっても、微かにそれぞれ色が違う。
 形もおざんなりではなく、それぞれが細かく形が違うという一つひとつが画一したものだった。
「赤月(あかつき)、それが終わったら一休みするえ。一昨日からずっと篭りっぱなしで根を詰めすぎや」
 赤月と呼ばれた画家は、平静を装いながらも隠し切れなかった疲れた顔で苦笑を零し、「はい」と返事を返した。
 その返事にマチコは満足そうに目を閉じて、ひんやりと心地よい床の感覚を楽しみながら転寝と意識を落としていった。
 静かになった空間で、赤月が筆を動かす音だけが響く。
 さっさっさ……色を持った筆が、色を塗りつぶす。
 立ったまま、ひたすら黙々と筆を動かす。
 そこにあるのは脳内にある記憶とイメージだけ。
 彼の、赤月の描くものは、自然でも人間でもない。
 ただ、ひたすらに妖怪や黄泉に連なるもの、人成らざる者だけだった。

 そして彼に絵を頼むものは、人成らざる者。

 彼もまた、人にして人にあらず。
 
 顔料で所々汚れた着物をはためかせ、赤月は筆を下ろした。
「……ふー」
 一度目を閉じて深呼吸すると、完成した絵に腰のポーチから蓋のついた一つの筆を取り出し、言葉を、綴る。
「開」
 蓋が消える。
 筆先を、赤い彼の舌が舐める。
「縛」
 筆が、描き終えられた画布を撫でる。
 透明な文字が書かれ、筆を離すと赤月は「閉」と唱え蓋がもとのように戻るのを確認すると、筆をポーチに戻した。

※この小説(ノベル)"妖怪画譚"の著作権は櫟荷清太さんに属します。

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