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小説(ノベル)

妖怪画譚 (執筆中)

作:櫟荷清太 / カテゴリ:ファンタジー / 投稿日:'09年7月18日 22:23
ページ数:4ページ / 表示回数:565回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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序幕

 そこにある空に色はなかった。
 あったのかもしれないが、それを色と呼べるほどに美しいものではなかったし、移ろうこともしなかった。
 こずんだような、透き通ったような、どれだけ模索してもやはり表現のしようがない。
 それを空と呼ぶに相応しいものなのかと問われたとしても、そこは部屋の中でもなければ、外と呼べる空間になるのだから、空と呼ぶほか仕方がないのだ。
 そんな曖昧な空は何処までも広がっているように見えるのに、そこには一軒の家とそれを囲む高めに出来た風化しかけた木製の塀だけがあり、その外側には何もない。
 広くも狭くもない、日本家屋。時折吹く風が、顔料の匂いを運ぶ程度であった。
 ガラスに木を組んだ引き戸の玄関の前には、小さな門があり、常に門の扉は閉ざされていた。
 庭と呼べるかどうかの縁側に面した空間には下りて数歩あるけば其処は赤い紅い花に覆われていた。
 細い花びらを持つ曼珠沙華が低い音を立て揺れる。
 枯れ朽ちることなく、咲き続ける花々の中央には二メートルほどの広さの水溜りのような池がひっそりと顔を出していた。
 池の中央を覗き、池の隅からは水面から曼珠沙華が生えていた。
 水面は赤を写しこむような水鏡で、水中は見えない。
 がさり、赤の中から黒い影が顔を出した。
 首に注連縄を首輪のように巻いた一匹の黒猫が、金の目を瞬かせて縁側に飛び乗る。
 三本の尾がゆるりと動き、床が慎ましやかにきしりと小さい音を立てた。

「……マチコさん?」

 屋敷の奥から細い緩やかな声が響く。
 黒猫は、否、黒い化け猫は声のする方へと優雅に歩き出す。
 開け放たれた障子とそこから続く小奇麗な畳の間を抜け涼しげな廊下に出ると、右に向きを変え、そこから覗く土間造りの白い壁の空間に出た。
 土間に下りることなく、ひんやりした廊下の縁ごろりと寝転がり、土間の中心にいる青年のような少年のような姿顔立ちの画家を眺める。

「お帰りなさい、マチコさん」

 画家は化け猫に向けて笑う。
 その手には三本の筆を持ち、目の前にある古ぼけた木製のイーゼルに立てた画布に色を置いていた。
 画家は飴色の微かに跳ねた癖のある髪に、白いタートルネックのノースリーブ、顔料が付き、所々華々しくなったジーンズ、茶色のブーツを纏い、そして白い着物を袖を通すことなく肩から羽織っていた。
 首と腰には赤い数珠を掛け、珠の1つには青い房が揺れる。
 茶色い大きめのポーチを腰に付け、画家はにこりと笑った。



 ここは世界の狭間、堺(さかい)と呼ばれる世界。
 画家と化け猫が暮らす、小さな小さな世界の御話。

※この小説(ノベル)"妖怪画譚"の著作権は櫟荷清太さんに属します。

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