小説(ノベル)
わすれられたおもちゃとねこ (完結作品)
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ノラネコのまち
梯子をのぼるとあたりが急にまぶしく感じられた。
ぼくは、目が眩み(くらみ)そうであわてて、手をかざした。
やがて視界がはっきりしてくると夜のまちがそこには、あった。
まちのあっちこっちにスポットライトのような
光が点々(てんてん)としている。
まぶしかった正体は、この街頭(がいとう)らしきものの
光だったんだと、すぐにわかった。
お父さんは、ぼくを背中からおろすと、
なにやら集まっているネコの集団を指して(さして)言った。
「ほう…ずいぶんと今日はにぎやかだな。
集会でもやってるんじゃないか?。」
「ねえ、お父さん、ぼく行ってみてもいいかな」
「まぁ、待て。一人で行くとやつらに煙たがられる。
俺についてきなさい」
「はい」
ぼくは、お父さんを追いかけるようにしてついていった。
でもお父さんは、そんなぼくに気付いてくれたらしく、
今度は、わりとゆっくりと歩いてくれた。
集会の真ん中あたりまで来ると今度は、やけにきれいな白ネコが
声をかけてきた。どうやら、おんなのひとみたいだった。
「あら、クリフト。夜に来るなんて珍しいじゃない?
もしかして夜の女でも探してるの?」
「嫌らしい言い方をするなよ、ミルクティー。
そんなんじゃない。今日は人探しで、歩いてたら
いつの間にか夜になっただけさ。
下水の地下道は、夜になるのが早いからな。
時間を感じない薄汚ねー所だったぜ、相変わらず」
「じゃあ、また下水を歩いてきたのね。
体、洗ってきたほうがいいんじゃない?」
「余計な御世話だよ」
ミルクティーさんは、あんまりお父さんが好きではないのかもしれない
と、ぼくは思った。お父さんの相手にしては、上品すぎるからだった。
ベースのおじさんみたいに、傷もないし、汚れたような感じもしない。
ぼくがそっと顔を出すとミルクティーさんは、
ニコリと微笑みかけた。
「あら小さなお人形さん、こんばんは」
「こんばんは。」
「ミルクティーだよ、放し飼いのお嬢様ネコって所だ」
お父さんは、ぼくにミルクティーさんを紹介してくれた。
放し飼い…。聞いたことがある。ペットでありながら
ほとんど面倒を見ず、外に放り出して飼っている飼い主の事だ。
「放し飼いなのにどうして、ノラネコのまちにいるんですか?」
「お、おい…。それを聞くのかよ。」
「いいわよ。それくらい、言われたって不思議じゃないわ。
そうね、たまになりたくなるのよ、ノラネコって奴にね。」
「……」
よくわからなかったけど、大人の事情らしい。
ぼくはそれ以上聞くのをやめた。
「それで?。この男の子は、なにしにここに来たの?」
お父さんが答えた。
「天国にいるおばあちゃんの情報が欲しいんだ。
おーい誰か、情報屋はいないかー??」
それはそれは、大きなお父さんの声が響き渡った。
まわりにいたネコ達は、みんなソワソワしている。
でも誰も名乗り出る様子は、ない。
ぼくは、ちょっと恥ずかしくなってきた。
でもミルクティーさんは、全く動じてなかった。
お父さんは舌打ちをして、ぼくに前に出るように言った。
「お前が知りたいことだろうが!。お前が聞かなくてどうする。」
「そ、そうだけど…」
ぼくは、むりやり集まりの真ん中に立たされると、
質問をするようにお父さんに言われた。
※この小説(ノベル)"わすれられたおもちゃとねこ"の著作権はミークス・クローバーさんに属します。
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